俺がもし、俗世を離れる道を選んだとする。
そしたら、もしかしたら数学を選ぶかもしれない。
俺は文系だったが、数学にも興味を持つ時期が時々ある。
答えが出るまで手持ちの知識であーだこーだ試行錯誤しているうちにあっという間に時間が過ぎているのだ。
つまり暇つぶしに最適なのだ。
数学が暇つぶしに最適だという事は昔から常々思っていた。
ミレニアム懸賞問題(例えばリーマン予想)を証明しようとずっと考えているうちに一生が終わってしまった数学者が少なくない。
彼らは志半ばで命を終わってしまう。さぞかし無念だったろう。
人生のすべてを投げ打って挑戦した問題が解けずに死んでいくのだから。
それこそ永遠の命を欲しがる人たちだろうと思う。
NHKかなんかで、ポワンカレ予想を証明したペレルマンという数学者の事をやっていた。
ペレルマンは数学界のノーベル賞であるフィールズ賞を辞退するという変人だが、天才。
16歳で国際数学オリンピックで満点で金メダル。
しかも、本人は数学より物理学のほうが得意というキチガイじみた才能。
その天才ペレルマンは、数学とは全く違う分野の知識や志半ばで死んでいった数学者が残した知識の結晶などを駆使しして、誰も解けなかったポアンカレ予想を証明したという。
俺は凡人もいいところなので、ミレニアム懸賞問題に挑んだとしたら簡単に一生を潰せる気がする。
ずっと家で問題について考える。
そうやって一日がおわり、
そうやって一日の積み重ねである一生が終わっていく。
孤独を紛らわすという不純な動機。
なんとも屈折した発想だ。