ふと思ったが、オレって普通に大学卒業して正社員で会社に入りそれなりにキャリアを積み上げてきた人たちに追いつこうとしてるんだよな。10年かけて。
そのためには花道がルカワの3倍練習しないと高校在学中に追いつけないように、オレも彼らの3倍努力しないと、40代までに彼らの収入、可能性に追いつくことができない。
そもそもオレは新入社員というプラチナチケットを10年前にゴミ箱に捨ててしまっている。
しかも買い手市場で周りの3年だか4年生は内定を乱発していた。リクルートスーツで教授に内定の報告をしている場面に度々出くわした。
しかし、オレはその時別になんとも感じなかった。
オレには転売がある。
ハツラツとした顔つきの内定組を尻目にそう思っていた。
実はオレは大学を留年していて、仮に就職しようと思っても、できない状況であった。
転売で人と関わらずに金を稼ぐもんねみたいな、まるで計画性のない子供みたいな発想をしていた。
というか最近までそうだった。
10年経って一旦転売やめて日中に色んな所を散歩していくうちに、自分が置かれているヤバさを少し自覚するようになっていき、ヤフオク出禁で完全にヤバイことになっている事実に気がついた。
しかし、転売も足を洗ったほうがいい時期だと一方で考える。
消費増税で仕入れ価格が上がり、その煽りでヤフオクの落札手数料が増加、さらに契約先のヤマトの運賃が200円くらいも増額という向かい風のオンパレード。
転売は努力しても限界がある。
3倍働いたとしても、収入は3倍になるわけではない。
需要と供給というものがあるからだ。
オレの扱う商材は、常に需要が一定。特に減るわけでもないし、増えるわけでもない。
でも時代とともになだらかに下降線を辿っている感じのもの。
だからこちらが供給を増やしても結局供給過多になり、落札相場は下がる。
売れば売るほど利益も下がる。
結果投資した労働時間に対するリターンが割に合わないものとなる。
オレは金持ちに高く売る頭がないため薄利多売だから、もともと少ない利益が雀の涙程となる。
もうボランティア状態。それでもリーマン以下の収入。
結局、人と関わらないで金を稼ぐ手段という後ろ向きな気持ちではじめた結果がこれ。
10年経って、井戸の中から何かの拍子で飛び出た蛙が海を知ったように、外の風景を見たオレは人との関わりに憧れを感じはじめた。
憧れ・・・。外から見える彼らは楽しそうだった。
平日は上司に怒鳴られてボコボコにされているのかもしれないが、土日はデートとか家族と楽しそうにプライベートを楽しんでいた。
これがオレが引きこもっている間、10年歩いてきた人たちなんだなぁと思うと同時にオレは10年間一体何やってきたんだろう・・・という気分になってくる。
何にもない!
何も身についてない。
人脈もない。スキルもない。資格もない。
友人もいない。恋人もいない。家族もいなくなった。
吉幾三の歌かよ・・・・
10年間コンビニのバイトをしていたようなもの。
しかも休みなしだったから、これまた割に合わない。
転売から足を洗ういい機会かもしれないが、早速前途多難だ。
10年前よりも状況はかなり悪くなっている。(10歳増えたので当たり前だが)
30過ぎの職歴なしなんて正社員を目指すにしても、そんなやつを雇うとこなんてない。
あったら頭がどうかしてる。
まず箸にも棒にもかからないだろうし、一生バイトも覚悟しなきゃならない。
10年前に気づいていればなぁ。
でも、気づいていたとしても10年前のオレは動かないだろうなぁ。
オレってそういう人間だから。
結局、運命は変わらないのである。