秋葉転売時代。目の上のたんこぶだった男とたまに現れるそいつの連れ。
いずれも小汚い気色の悪い顔の連中であった。
イメージカラーは黒、灰。というかそいつらはいつもそんな感じの一張羅だった。
糞でかい汚らしいボロリュックに毎日同じ格好だったからファッションとかに興味はなかったのだろう。(俺も同じだったが。)
蛇のような目をしていて、いかにもプロと言ったやつら。
しかし、真逆のにわか転売君がいた。
彼は、稼ぐために転売物件を探し回っているというわけではなく、秋葉を楽しむ延長と言った感じだった。
その人と先ほどのたんこぶと三人で話すことが多かった。
風貌はメガネでねずみ色の半袖、ジーパン、薄毛、歳は当時30前後と言った感じのネットワーク関係のSEをしていると話していた。
おそらく、本業があるから、たんこぶ野郎と違って転売に人生がかかっていないから、のほほんとしていたのだろう。
彼は典型的なアキバ系といった感じで、肩が常に上がっているのか、エヴァンゲリオンの初号機みたいな姿勢だった。
俺も似たような感じのコミュ障でおどおど目で喋る感じだったので、一緒にいて安心した。(ホモ的な意味じゃなく)
高圧的でもなく、たんこぶ野郎のように舐めまわすような視線でもなく、自分に自信がない点を除くと普通の人のように見えた。
今会いたい人は彼だ。
彼と交流があったのは半年も満たなかったと思う。
俺は秋葉での仕入れができなくなり、(同業者全員(8人くらい)が2CHにいたから一人ひとりにあだ名がついていたw)秋葉にも寄り付かなくなっていった。転売できるものがなくなってきた頃だったし、ネットに写真や行動がさらされるのが怖かったから。(マジで怖いんだよこれ。格好や行動の一部が書かれるから。例えば、今日は○○に行って○○を2個買っていたね。とか、今日はいつもの○○のズボンじゃないねとか、どこで見られているかわからないというのは非常に怖いのだ。)
そしてその人とも出会わなくなり、連絡先はおろか名前すら聞くことができなかった。
当時は何も思わなかったが、10年経って振り返ると、当時彼と友達になればよかったと後悔している。
なぜなら、誰かと友だちになる最後のチャンスだったからだ。
それは今になってわかることなので、当時としてはまさか俺の人生がこんなになってしまうなんて全然考えなかった。
もう顔すらおぼろげにしか覚えていない。更に10年のときが経っているため、もし出会ったとしてもお互いに気づかないかも知れない。
そう考えると当時何回か居合わせて話した相手だとしても、お互いに連絡先を交換しないと、長い目で見れば一期一会だったんだなと回想する。
彼は俺のようなことになっていないことを祈る。幸せに暮らしていて欲しい。
たんこぶ野郎はどうでもいい。