Chase the Cnanceが東山主演のドラマの主題歌に起用されていたような時期で、ああ、安室様とはならなかった。
当時の俺からしたら、17、8の小娘でも大人のお姉さんという目で見ていたというのもあるけど、他にもう一つ別の覚えがある。
それは同級生に安室似の男がいたからだ。
小学生の頃からそれなりにもてていた。(別にアホみたいなジャニーズ系の美少年がいたので霞んでいたけど)身長は小さく前から数えたほうが早かったけど、小学生の時なんで、第二次性徴基でいくらでも巻き返しできるだろう。その男とは中学は別になったが、風のうわさで聞いたところによるとボクシングのプロになったと聞く。あと顔が安室系だから、中学になってアホみたいにもてたという武勇伝も同時に耳にした。
俺はそいつに嫉妬していた。顔じゃない。彼の絵の才能にだ。
俺は小さな頃から気付けばノートの隅に落書きをしていた。落書きを空気を吸うようにするくらい自動書記のように絵を描いているような子供だった。だから同級生よりも絵がうまかったが、そいつは俺が嫉妬するほどの絵の才能があった。自画自賛になるかもしれないが、なまじ絵に対して感性が鋭かったのか、ヒソカがゴンを見初めたように才能を見抜いたのかもしれない。
今も覚えている。
小学校の校庭に消防車を呼んで、全学年で写生大会が開かれた。そこで俺が見た彼の絵は衝撃的だった。俺を含め皆、消防車の側面を描いている生徒が大半だったが、そいつひとりだけ、消防車を斜めから描いていた。斜めは難しい。手前と奥の遠近感やパースが要求される。彼はぱっと見だけどパースが破綻することなく見事に斜めからみた消防車を描いていた。子供ながらに負けた・・・って思った。センスが違うと。こいつにはかなわないなと。
そんな彼がボクシングの道に進んでいたとは意外だった。
ガチンコファイトクラブを見る限り、プロテストは難しいという印象だった。そりゃそうだ。ボクシングのプロになるんだ。簡単なわけない。
しかし、そいつは受かった。安室似の端正な顔立ちに、ボクシングのプロになる運動神経、俺が嫉妬するほどの絵のセンス。よく考えたらそいつめっちゃすごい。
しかし彼も俺と同い年だからもうおっさんだなぁ。
安室似のおっさんになっているんだろうか。
親同士が交流があった時期もあったんで今会ってみたい気もするが、合わせる顔がない。
こういう時にゴミみたいな人生を送ってきた後ろめたさを感じずにはいられない。