昨日死にそうな黒い蝶がアスファルトの上でうずくまっていた。
少し触ってみる。
すると触覚や足を動かした。
ハネをつまんでみるとバタバタしだした。
俺は助けずに写真を撮る。
写真はアイフォン5sで撮ったものだ。
ここまでの接写でも全く逃げないことからこの蝶が尋常でない状況にあることは窺い知れることだろう。
この写真が頭によぎった。
1966年 安全への逃避
ベトナム戦争の戦火を逃れるため河を泳ぎ渡る母親と子どもたち。
ピュリツァー賞を受賞した作品であるが、まっとうな人間なら写真なんか撮ってないでとっとと助けろよ!というような批判を浴びたとか。
勿論写真家にしても、世界の多くの人に戦争の実態を伝えるためだとか言い分はあるだろう。
どちらが正解とも言えない。価値観は人それぞれ。
この蝶はもう満身創痍で死が目前にあるように感じた。
ハネを開いたっきり閉じるのすら苦心している。
結局、近くの家の軒先に移動した。
雨が当たらないところに。
結局、ハネを閉じる力もなく、しばらく観察していたが、結局閉じることはなかった。
どうすればよかったのか?
正解なんてない。
ただ俺は思ったことを実行しただけ。
こんな雨に濡れて死にそうな思いをしててかわいそうだなぁと思った。
だから雨の当たらないところに移動させた。
最後の晩餐で花の上に置いておけばよかったかもしれない。
ただ、そんなところに置いたら風に吹かれて落下するかもしれない。
死にどころに干渉したのも余計なお世話だったかもしれない。
一寸の虫にも五分の魂。
昨日は、朝から色々考えさせられた日だった。