混んでる電車。
先頭車両でもたれかかっていると目の前のつり革を掴む男が出現。
そいつの肘が邪魔になる。
ああ、邪魔だなと思いつつもこちらの意思は伝わらずひたすらイライラすることに。
それが通常だ。
みんな自分が倒れないようにするのに精一杯だ。余裕はない。
そんな中、土日に女も連れていない背の高いイケメン君が斜め前方にいた。
短髪。二重で長いまつげの縄文系ながら暑苦しさは感じない。視線は鋭く涼しげだ。肌はきれいで白い。隙き無くイケメンの特徴を踏まえている。
チャラ男成分は皆無。女関係は真面目そうな感じがした。
彼も最初はそうだった。
通常の人間同様、俺の顔の前に肘があっても気にしない。
と思っていたら、違った。
くいっと眼の前から肘を遠ざけてくれた。
惚れた。
かっこいい・・・。
さらに、乗り進んでいくと人がじゃんじゃん雪崩れ混んでくる。
彼はさり気なく俺用のスペースを作ってくれた。というか狭かったところを広げてくれた。
彼は無表情。
なんなんだこいつは。
とんでもない男前だ。
物理的にもイケメンで行動的にもイケメン。
なぜなんだ。
なぜこうもちがうんだ。
わけがわからない。
彼は人が大勢降りる駅で俺と同じタイミングで降りた。
足早に走って消えていった。
彼の姿をずっと目で追ってしまった。
こんなことを言ってはいるが、我はホモではない。