街を歩けば、美人だなと思う女は割りと見る。
しかも、雑誌モデルのような超絶美人も一日に数人は見かける。
しかし、それらはいくら美人でもほとんど一瞬しか目に映らないため、翌朝にはどんな顔か思い出せなくなる。
しかし、その超絶美人の中でもトップクラスはいつまでも目に焼き付いて離れない。
俺が渋谷から電車で帰る時に同乗した女はまさにそんな女だった。
渋谷から家に向かう電車に乗っていると、車内が混雑してきた。
男と女が半々くらい。
その時は5月のゴールデンウィーク真っ只中だった。
俺は壁にもたれて、下むいてスマホをいじっていた。
電車は出発し、ふと視線を上にあげると、長身でよくいる派手な格好の女を視線に捉えた。
ああ、長身派手系の量産型ね、はいはい、みたいな感じで視線を再び下ろそうとした。
しかし、その女は本物だった。
彼女は横を向いていたんだが、顔はまさに「鈴木えみ」だった。
思わず、じーっと見てしまった。
横顔だったが、それはもう完璧だった。
どちらかというと日本人ではなく外国人に近い輪郭。
しかし、ハーフという感じでもなく、デスノートとかに出て来るキャラクターみたいな感じ。2.5次元というのはこういう顔をいうのかと思った。
目は二重を標準装備していて抜かりなし。
重ね重ねになるが、長身でスタイルもいい。
面白いのは周りの男たちの反応だ。
男は美人が近くにいてもせいぜいちら見する程度。
だが、超絶美人になると、途端におかしくなる生き物なのだ。
まず、挙動不審になる。見たいけど、見られない。
並の美人だったら、その気持を理性で抑え込むことができるが、超絶美人だと抑え込めない。
もうそれは見たくて見たくてしょうがないのだ。でもジロジロ見ちゃいけないという葛藤が体に現れて、キョロキョロしてしまうのだ。
その鈴木えみを認識した俺の周りの男たちは、もうそれは、馬横でボディーガードのようにガン見する男、振り返ってまで何回もチラチラ見る男、目をまんまるにして笑みをこらえる男などなどそれはもう電車の中がカオティックな空間と化していた。
その後、大勢降りる駅でその美人は降りていったが、ストーカーするやつとかいるんだろうなぁ。超絶美人の苦労は測りしれないのであった。